ネットショップで自宅住所を出したくない:特商法の住所を非公開にする3つの方法
公開日: 2026/7/16
この記事でわかること
ネットショップやハンドメイド販売を始めるとき、多くの人が最初に立ち止まるのがこの問題です。
「特定商取引法に基づく表記」に、自宅の住所と電話番号を載せなければいけないの?
原則としては、載せるのがルールです。ただし2021年以降、消費者庁の見解整理と各プラットフォームの機能追加によって、自宅住所を画面に表示しないで運営する現実的なルートが3つに整理されました。この記事では、その3つの条件・限界・選び方を、一次情報(消費者庁・各社公式)に沿って解説します。
まず前提:何を表示しなければいけないのか
特定商取引法(11条および施行規則)により、通信販売の広告——ネットショップの画面はこれに当たります——には、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などの表示が求められます。個人事業主の場合、消費者庁の「通信販売広告Q&A」では次のように整理されています。
- 氏名:戸籍上の氏名、または商業登記簿に記載された商号。屋号・ショップ名・ペンネームだけでは不可
- 住所:現に活動している住所。私書箱は不可
- 電話番号:確実に連絡が取れる番号
つまり何も対策しなければ、自宅で開業した人は自宅住所と個人の電話番号がネット上に公開されうる、ということです。ここから「出さずに済ませる」3つのルートを見ていきます。
なお先に重要な点をひとつ。氏名はどのルートでも原則隠せません。 非公開にできるのは住所・電話番号です。
ルート1:省略規定を使う(請求されたら開示する方式)
特商法11条のただし書により、「消費者から請求があれば、氏名・住所・電話番号等を記載した書面や電子メールを遅滞なく提供する」旨を表示し、実際に提供できる体制を整えている場合は、広告上の表示を省略できます。
- 向いている人:表示面から住所を消したいが、請求時の開示は許容できる人
- 限界:開示義務そのものは消えません。 購入検討者から請求されれば、自宅住所を伝えることになります。「遅滞なく」は、申込みの判断に間に合うタイミングでの提供と解釈されています
- コスト:0円
「不特定多数に常時公開される状態」は避けられますが、「誰にも知られない」わけではない——この距離感を理解して使う制度です。
ルート2:プラットフォームの非公開機能を使う
2021年に消費者庁が示した見解(現在は通信販売広告Q&Aに掲載)を受けて、主要プラットフォームは**運営会社の住所・電話番号を代わりに表示する「非公開機能」**を実装しました。要件は、取引がそのプラットフォーム上で行われ、運営会社が販売者の現住所・連絡先を把握し、確実に連絡が取れることです。
| サービス | 機能 | 対象 | 代替表示されるもの |
|---|---|---|---|
| BASE | 特商法表記の非公開設定(2022年〜) | 個人のみ | BASE株式会社の住所・連絡先 |
| STORES | 所在地・電話番号の非公開設定(2022年〜) | 個人・個人事業主 | 運営会社の所在地・電話番号 |
| minne | 所在地・連絡先の非公開(2022年〜) | 個人(個人事業主含む) | GMOペパボ株式会社の所在地・連絡先 |
| メルカリShops | 住所・電話番号の非公開(2023年〜) | 本人確認済みの個人事業主 | 運営会社の住所・電話番号 |
(Creemaにも同様の仕組みがあるとされますが、公式ヘルプでの最新条件の確認をおすすめします。各社とも仕様・条件は変わりうるため、利用前に必ず公式ヘルプでご確認ください)
無料で使えて手続きも簡単なので、対象プラットフォームだけで販売するなら第一候補です。ただし共通の限界が3つあります。
- 氏名(事業者名)は非公開にできない
- 発送元は自分の住所を使う必要があり、返品対応の場面では住所・連絡先を購入者に伝える必要が生じうる
- そのプラットフォームの外では使えない。 独自ドメインの自社サイトには適用されず、プラットフォームを移転したら消える
「配送・返品でどのみち住所が出る」問題は、匿名配送に対応した販売方法を選ぶなどの緩和策もありますが、ゼロにはなりません。
まず無料で始めつつ住所を非公開にしたい場合の選択肢 → BASE(無料ネットショップ開業)の公式サイトを見るPR(広告・PR)
ルート3:バーチャルオフィスの住所を使う
事業用の住所を月額制で借りられるバーチャルオフィスの住所・電話番号を、特商法表記に使う方法です。消費者庁の通信販売広告Q&Aは、事業者と確実に連絡が取れるなどの要件を満たせば、バーチャルオフィスの住所・電話番号の表示でも特商法の要請を満たすとしています。
プラットフォーム非公開機能との最大の違いは、適用範囲の広さです。
- 独自ドメインの自社サイト(Shopify・カラーミー・エックスサーバーのショップ等)でも使える
- 特商法表記だけでなく、開業届の事業所欄・名刺・請求書・ショップカードにも同じ住所を使える
- 郵便転送のあるプランなら、返品先住所としても機能しうる(プラン次第・要確認)
- プラットフォームを移転しても住所はそのまま
一方でコストは月額数百円〜数千円。つまり整理すると、**「1つのプラットフォーム内で完結する人は非公開機能、自社サイト運営・複数販路・返品先まで自宅を出したくない人はバーチャルオフィス」**という住み分けになります。
選ぶときのチェックリスト(特商法用途)
バーチャルオフィスならどこでもよいわけではありません。契約前に必ず確認したいのは次の4点です。
- 特商法表記への利用を公式に認めているか(規約・FAQで明示があるか)
- 郵便物・宅配便の受取と転送:返品先として使うなら転送は必須。転送頻度と料金も
- 電話番号:番号貸与や電話転送・秘書代行のオプションがあるか(「確実に連絡が取れる」体制を作れるか)
- 月額と初期費用:住所表示だけなら最安プラン、返品受取まで任せるなら転送付きプランで比較
たとえば以下のサービスは、特商法表記への利用可を公式に明示しています(2026年7月時点。条件・料金は必ず公式で最新を確認してください)。
住所表示用の低価格プランから郵便転送まで選べる → GMOオフィスサポート(バーチャルオフィス)の公式サイトを見るPR(広告・PR)
都心一等地住所+電話番号や電話秘書のオプションが充実 → レゾナンス(バーチャルオフィス)の公式サイトを見るPR(広告・PR)
非営利団体運営で、士業への経営相談を年1回以上受けることを条件にサービス利用料が無料(協会年会費6,000円のみ・京都住所)という変わり種も → 和文化推進協会(バーチャルオフィス・副業起業支援プラン)の公式サイトを見るPR(広告・PR)
どのタイプのバーチャルオフィスが合うかは、1分の無料診断やバーチャルオフィス比較記事でも整理できます。
見落としやすい注意点3つ
1. 「法律上OK」と「サービス規約上OK」は別物 特商法上はバーチャルオフィス住所が認められる場合でも、利用するショップ作成サービス側が登録住所の条件を規約で定めていることがあります。プラットフォームの規約とバーチャルオフィスの規約、両方の確認が必要です。
2. 古物商許可を取る予定があるなら要注意 中古品・アンティークの販売に必要な古物商許可では、営業所としての実態が求められるため、バーチャルオフィスでは原則難しいとされています(管轄警察署の判断によるため、該当する人は事前に相談を)。
3. 銀行口座・融資の審査 事業用口座の開設自体は可能とされますが、バーチャルオフィス利用時は事業実態の確認が丁寧に行われる傾向があります。屋号付き口座や融資を予定している人は、事業実態を示せる資料を準備しておくと安心です。
まとめ:3ルートの使い分け
- コスト0で表示だけ消したい → 省略規定(ただし請求されたら開示)
- BASE・minne等の中だけで販売する → プラットフォームの非公開機能(無料・ただし発送/返品と氏名は残る)
- 自社サイト・複数販路・返品先まで自宅を出したくない → バーチャルオフィス(月額コストと引き換えに適用範囲が最も広い)
組み合わせも可能です。プラットフォーム内は非公開機能、独自サイトはバーチャルオフィス、というハイブリッドで運用している販売者も少なくありません。
自宅住所は一度ネットに出ると回収がききません。「売れてから考える」ではなく、ショップ公開前に住所の扱いを決めておくことを強くおすすめします。
出典
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「通信販売についての広告」
- 消費者庁「通信販売広告Q&A」(住所・氏名の解釈、省略規定、プラットフォーム/バーチャルオフィスの連絡先に関する項)
- BASE「特定商取引法に基づく表記の非公開設定」告知
- STORES 所在地・電話番号の非公開設定 リリース
- minne 個人事業者の所在地・連絡先の非公開について
- メルカリ公式コラム:メルカリShopsの住所・電話番号非公開
(本記事は2026年7月16日時点の公開情報に基づきます。法令の解釈・各サービスの仕様は変更されることがあるため、最新情報は消費者庁および各社公式でご確認ください。個別の判断に迷う場合は、行政書士等の専門家や消費生活センターにご相談ください。)