ネットショップ・ハンドメイドの経費一覧
公開日: 2026/7/3 / 更新日: 2026/7/3
この記事でわかること
「材料をたくさん買ったのに、思ったより経費で引けなかった」——ネットショップやハンドメイド販売を始めた人が、最初の確定申告でつまずきやすいポイントです。物販には、Webサービス系のフリーランスとは違う独特の論点があります。販売プラットフォームの手数料、梱包・送料、そして「売れ残った在庫」の扱いです。
この記事では、ネットショップ運営者・ハンドメイド作家の実務に絞って、どの支出がどの科目になるのかを具体例で整理します。あわせて、物販でつまずきやすい在庫(売上原価)と自宅制作の家事按分まで踏み込みます。一般的な経費全般の考え方はフリーランスの経費一覧|個人事業主は何が落ちる?で扱っているので、ここでは「物販ならでは」に集中します。
まず大原則:物販でも「業務との関連性」で判断する
必要経費に算入できるのは、大きく「収入(売上)を得るために直接要した費用(売上原価など)」と「その年に生じた販売費・一般管理費その他の業務上の費用」とされています(2026年7月時点・国税庁No.2210)。物販でも土台は同じで、その支出が販売という業務と関連しているかが判断軸です。
ただ、ネットショップ・ハンドメイドには物販特有の注意点が2つあります。ひとつは、買った材料が全部その年の経費になるとは限らないこと(在庫の論点)。もうひとつは、プラットフォーム手数料を引いた「入金額」を売上にしてしまいがちなこと。この2つを押さえるだけで、申告の精度が大きく変わります。
ネットショップ・ハンドメイドの主な経費科目 一覧
まず全体像です。青色申告決算書でよく使う勘定科目に、物販での具体例をあてはめました。「こういう箱がある」という地図として使ってください。
| 勘定科目 | 物販・ハンドメイドでの具体例 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| 仕入 / 売上原価 | 転売・せどりの仕入商品、完成品の仕入 | 在庫を除いた「売れた分」が原価 |
| 材料費(消耗品費等) | 布・糸・レジン・ビーズ・パーツ・木材・釉薬 | 制作の主材料。在庫との関係に注意 |
| 荷造運賃 | 発送の宅配便・ゆうパック、箱・封筒・緩衝材・OPP袋・テープ | 物販で最も使う科目のひとつ |
| 支払手数料 | BASE・minne・Creema・メルカリ等の販売手数料、決済手数料、振込手数料 | 入金額でなく総額を売上に |
| 広告宣伝費 | Instagram広告、モール内広告、ノベルティ、チラシ | 集客のための支出 |
| 通信費 | ネット回線、スマホ、ショップの月額・ドメイン代 | 私用兼用なら按分 |
| 地代家賃 | 自宅の制作スペース分、レンタルアトリエ、コワーキング | 自宅兼用は家事按分 |
| 水道光熱費 | 制作に使う電気(ミシン・オーブン・UVライト等)の事業分 | 自宅兼用は家事按分 |
| 消耗品費 | ラッピング用品、事務用品、少額の制作道具 | 一定額以上は減価償却の検討 |
| 減価償却費 | 高額なミシン・レーザー加工機・撮影機材・PC | 取得価額10万円以上が一つの目安 |
| 外注工賃 | 撮影・デザイン・ページ制作・一部工程の委託 | 源泉徴収が絡む場合あり |
| 旅費交通費 | 材料の買い出し、イベント・マルシェ出店の交通費 | 経路・目的を記録 |
| 新聞図書費・研修費 | 技法の専門書、講座・ワークショップ受講 | 業務関連性を説明できること |
科目名はソフトや人によって差があります(例:材料費を「仕入」に入れる、ラッピング資材を「荷造運賃」か「消耗品費」で分ける など)。正解探しより、毎回同じルールで一貫して仕訳することが大切です。
物販の要注意①:BASE・minne等の「手数料」と売上の立て方
ネットショップ・ハンドメイドで最も間違えやすいのが、プラットフォームに払う手数料と売上の関係です。
たとえば商品を3,000円で売り、販売手数料・決済手数料で合計300円が引かれ、2,700円が入金されたとします。このとき「売上2,700円」としてしまうのは、正確でない場合があります。一般的に案内されるのは、手数料を引く前の3,000円を売上に計上し、300円は『支払手数料』として経費に計上するという総額での処理です。
入金額だけを見ると差額は同じに見えますが、売上の総額が変わると各種の判定(消費税の課税事業者になるかの基準など)に影響する場面があります。プラットフォームの管理画面や取引明細で、「売上総額」と「差し引かれた手数料」を分けて確認しておくと安心です。
物販で「支払手数料」に入りうる主な例は次のとおりです(サービスにより名称・料率は異なります)。
- 販売手数料・サービス利用料:BASEのサービス利用料、minne・Creemaの販売手数料 など
- 決済手数料:クレジット決済・コンビニ決済等にかかる手数料
- 振込手数料・引き出し手数料:売上を自分の口座へ移すときの手数料
- 月額利用料:有料プラン・独自ドメインオプション等の固定費
BASEのように初期費用・月額を抑えて始められる無料プランのショップもあれば、独自ドメイン+レンタルサーバーで自前構築する方法もあります。どちらが向くかは規模・目的で異なるため、始め方の比較はネットショップの始め方|無料のBASEと独自ドメインの違いで整理しています。
物販の要注意②:売れ残った在庫は「その年の経費」にならない
ここが、Webサービス系フリーランスとの最大の違いです。買った材料や仕入れた商品のうち、年末に売れ残っている分は、原則その年の必要経費にはなりません。
必要経費になるのは「売れた分の原価」だけで、これを売上原価と呼びます。計算式の基本は次のとおりです。
売上原価 = 期首在庫(年初の在庫)+ その年の仕入・材料費 − 期末在庫(年末の在庫)
そのため、年末時点で手元にある在庫を数える棚卸しが前提になります。棚卸しの対象は、完成した商品だけでなく、作りかけ(仕掛品)や未使用の原材料も含まれると案内されることがあります。
具体例で見てみましょう。ハンドメイドで、その年に材料費を30万円使い、年末に「まだ作品になっていない材料+売れ残り作品」が10万円分あったとします。単純化すると、当年の売上原価は「0+30万円−10万円=20万円」となり、残る10万円は在庫として翌年へ繰り越すイメージです。「30万円使ったのに20万円しか引けない」のは、この仕組みによるものです。
ポイント:材料をまとめ買いすると仕入は増えますが、売れなければ当年の経費(原価)は増えません。「年末に材料を大量購入して節税」という発想が、物販では意図どおりにならない場合があるのはこのためです。棚卸しや評価方法(在庫の金額の付け方)は事業により異なるため、迷う場合は税理士など有資格者にご確認ください。
なお、少額で反復継続性が乏しい小規模な販売は「業務に係る雑所得」として扱われることもあり、その場合の帳簿・棚卸しの考え方は事業所得と異なる場面があります。事業所得と雑所得の分かれ目はハンドメイド販売の確定申告はいくらから?で解説しています。
物販の要注意③:梱包・送料は「荷造運賃」、送料込み販売の考え方
物販で頻繁に発生するのが、梱包資材と発送の送料です。これらは会計上、荷造運賃という科目で計上される例が多く見られます。
- 梱包資材:段ボール箱・宅配袋・封筒・緩衝材(プチプチ)・OPP袋・テープ・宛名シール など
- 送料:ヤマト・ゆうパック・クリックポスト・ネコポス等、購入者へ発送する運賃
迷いやすいのが「送料込み(送料無料)で売っている場合」です。送料込みでも、実際に運送会社へ払った送料は費用として計上でき、その代わり販売価格の総額が売上になる、という整理が一般的です。逆に「送料別(購入者負担)」でも、いったん自分が立て替えて発送していれば、受け取った送料相当額を売上に含め、支払った送料を経費に計上する形になる場合があります。受け取り・支払いの両方を記録に残すのがポイントです。
一方、**ラッピング用の資材(リボン・化粧箱・メッセージカード等)**は、荷造運賃ではなく消耗品費や広告宣伝費で処理する考え方もあります。科目の切り分けは事業により異なるので、自分の中でルールを決めて一貫させることが大切です。
物販の要注意④:自宅で制作・撮影・発送する人の「家事按分」
多くのハンドメイド作家・ネットショップ運営者は、自宅で制作・撮影・梱包・発送までを行っています。この場合、家賃・電気代・通信費などは事業と私生活の両方にかかる支出(家事関連費)にあたり、業務に必要だった部分を取引の記録などで明らかに区分できる(家事按分できる)ときに、その部分を必要経費にできるとされています(2026年7月時点・国税庁No.2210ほか)。
物販ならではの按分の考え方の例を挙げます(いずれも一例で、妥当な割合は事業実態によります)。
- 家賃:制作・在庫保管・撮影・発送に使うスペースの床面積の割合で按分
- 電気代:ミシン・オーブン・UVライト・レーザー加工機など電力を使う制作機器の使用状況を踏まえて按分
- 通信費:ショップ運営・撮影データのやり取り・顧客対応に使う回線やスマホの業務利用割合で按分
重要なのは、割合の根拠をメモや図で残しておくことです。「6畳のうち2畳を制作・在庫専用にしているので約33%」のように、自分で説明できる状態にしておくと安心です。割合の妥当性は個別事情で変わるため、迷うときは税理士など有資格者に確認しましょう。按分の割合を設定して対象科目を自動計算できる会計ソフトもあります。
経費は「記録」が9割。物販は取引が多いから仕組み化が効く
物販は、Webサービス系と比べて取引の件数が多いのが特徴です。材料の仕入れ、資材の購入、1件ごとの送料、プラットフォームの手数料——これらを月末にまとめて手入力するのは負担が大きく、計上漏れや科目の付け間違いの原因にもなります。
そこで多くの運営者が使うのがクラウド会計ソフトです。一般的に紹介される利点は次のとおりです(対応範囲は各社・プランで異なるため要確認)。
- 銀行口座・カード明細を自動取り込みし、仕訳候補を提案してくれる
- 一度決めた科目の振り分けルールを記憶し、次回から自動で同じ科目に仕訳しやすい
- 家事按分の割合を設定して対象科目を自動計算できる場合がある
- 入力データがそのまま青色申告決算書・確定申告書の作成につながる
物販特有の「手数料を分けて売上を総額で立てる」「棚卸しで在庫を管理する」といった作業も、明細が自動で流れ込む状態にしておくと確認がしやすくなります。ソフト選びはクラウド会計ソフトの比較で整理しています。各社の最新プラン・対応機能は公式サイトでご確認ください。
- 仕訳ベースの画面と自動連携の幅広さが語られることが多い → マネーフォワード クラウド会計・確定申告の公式サイトを見るPR(広告・PR)
- 質問形式の入力で簿記が苦手な人にも紹介されることが多い → freee会計の公式サイトを見るPR(広告・PR)
自分の経費まわりがざっくりどうか方向性を確かめたいときは、無料の会計まわりの診断ツールもあわせて活用してください。
まとめ:物販は「手数料・在庫・按分」の3点を押さえる
ネットショップ・ハンドメイドの経費は、フリーランス一般の考え方に、物販ならではの3つの論点が加わります。
- 手数料:BASE・minne等の販売/決済手数料は「支払手数料」で経費に。売上は手数料を引く前の総額で立てる
- 在庫:売れ残った材料・作品は当年の経費にならず、必要経費は売上原価(期首+仕入−期末)。棚卸しが前提
- 家事按分:自宅制作なら家賃・電気・通信を説明できる基準で按分し、根拠を記録
- 梱包・送料は荷造運賃が基本。送料込み販売でも受け取り・支払いを両方記録
繰り返しになりますが、個別の判断は事業内容や最新の取り扱いによって変わります。本記事は情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。棚卸しや売上原価の計算、手数料の処理などに迷う場合は、最新情報を国税庁で確認のうえ、税理士など有資格者にご相談ください。当サイトは申告・税務書類の作成代行は行いません。
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- ネットショップ・ハンドメイド開業と確定申告 完全ガイド
- ハンドメイド販売の確定申告はいくらから?
- ネットショップの始め方|無料のBASEと独自ドメインの違い
- フリーランスの経費一覧|個人事業主は何が落ちる?
- クラウド会計ソフトの比較
出典・参考(2026年7月3日確認)
- No.2210 必要経費の知識(国税庁):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
- No.2100 減価償却のあらまし(国税庁):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 個人で事業を行っている方の帳簿の記帳のしかた・棚卸資産(国税庁):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/index.htm
- 確定申告書等作成コーナー(国税庁):https://www.keisan.nta.go.jp/
本記事は情報提供を目的としており、税務・法務上の助言を構成するものではありません。記載の制度・取り扱いは2026年7月3日時点の情報で、最新は国税庁でご確認ください。どの支出が経費になるか、在庫・売上原価の計算方法の最終的な判断は、最新の公式情報および税理士など有資格者への相談にもとづいて行ってください。当サイトは申告・税務書類の作成代行は行いません。